3-5【R18】

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 ランタンの明りに照らされて、忍の頬に睫毛の影が落ちる。  夜中に目覚めても怖い思いをしませんように。  また飽きずにキスがしたくなって、忍の顔を見ないようにタオルケットの中に滑り込んだ。仰向けで眠る忍の方に身体を向け、目を閉じて忍の寝息に呼吸を合わせる。瞼の裏の暗闇がとろりと濃厚になってきた頃、もぞもぞと忍が動く気配がしたので目を開けた。いつの間にか忍が向かい合う形になって、薄く目を開いていた。 「いがらし……」 「はい?」  完全に起こしてしまわないよう、小さな声で返事をする。 「灯り、消してもいいよ……もう怖くない」  五十嵐の胸に顔を寄せ、もう一度忍が目を閉じた。身体を丸め規則正しい寝息に戻ってゆく。  また涙が込み上げてきて、あわてて呼吸を整えた。もうこれ以上忍の過去を憐れむのは失礼だ。もう怖くないと、忍自身が乗り越えようとしているのだから。  鎖骨の下あたりに押し付けられた、温かな塊。タオルケットの上から優しく抱きしめる。  そばにいることで、少しでも恐怖を取り除いてあげられますように。体温を分け合うことで、少しでも安心させてあげられますように。  俺が貴方にとっての小さな灯りになれますように。
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