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「で、で、何だったのお土産」
「それがさー、メロン鹿って知ってる?」
「……は? なに、鹿?」
「北海道のゆるキャラでさー、頭にメロンかぶってる鹿。メロンから角が突き出てんの」
「……知らない。ゆるキャラとか興味ない」
「だよね。超興味ない……お土産がさ、そのメロン鹿の眼鏡拭きだったの」
「……眼鏡拭き?」
「そ。眼鏡拭き。いる?」
「いらない。眼鏡かけないし。……ていうか何それ、ウケ狙い?」
「わっかんない。ギャグにしてもセンスなくない?」
「ないわー」
「ないでしょ? 一次会で終わるでしょ?」
「終わるね」
「ちょっと期待してたんだけどな、商社マンとの合コン」
「商社マンって言ってもピンキリなんだね」
そう、一口に商社マンと言ってもいろいろな種類の人間がいる。
アタッシュケースを片手に世界中を飛び回るビジネスマンのイメージがあるが、一日中デスクに張り付いて仕事をするタイプの者もいる。扱う商材によって仕事のスタイルは天と地ほども変わり、十人十色だ。
海外で油田の開発プロジェクトに携わる商社マンもいれば、生産者と共に畑で農作物を収穫する商社マンもいる。合コンの手土産に眼鏡拭きを買ってくる商社マンもいるし、忍のように二の腕に「安全第一」と刺繍された作業着を着た商社マンもいる。
忍はわずかに伸び上がって、網棚の上に乗せたヘルメットの位置を直した。目の前の合コン話に花を咲かせる女性たちの上にヘルメットなんか落ちてきたら、まるで爆弾でも落ちてきたかのように大騒ぎされそうだ。
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