別れと出発

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 当時の高徳線はよほど古い車両を走らせていたのでしょうか。    窓も、ドアも締めているのに、トンネルに入ると、そこかしこから煙がモクモクと入ってきて、息がつけない位でした。  薄汚れたような煙だらけで、顔も煤け、のどが痛くてハンカチで鼻と口を交互に押さえていても、私は煙にまかれて死ぬんじゃないかと思う程、胸がドキドキして息苦しくて怖かったのです。  苦しみの乍らトンネルの数を数え、早く抜け出ないかと願っていました。  あちこちで児童達の咳が乱れ飛んでました。    今日の列車はあのトンネルを通るのでしょうか。
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