序章

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 夫が脳梗塞で倒れてからひと月近くなりますが、これから先、右手で物を持つことが出来ないし、ましてや歩くこともできないと云う事実は、本人がどれほど辛く苦しいことか。  それに耐えて行かねばならない日常の生活と、そして私の生活も一変することです。  七つ目の駅に降りてから、歩いて二十五分程かかりますが、しっかり歩かねばなりませんし、その上、救急病院なので3ヶ月しか入院出来ないから、リハビリの病院を見つけなければならないのです。  後遺症の治療には、倒れた次の日からのリハビリが大事とのことで、翌々日からリハビリが始まったのです。  リハビリの指導の先生に支えられ乍ら、動かない右脚を曳きずり、かなわない右手を先生の肩に預けて、ほんの少しずつ歩を進める夫の変わり果てた姿を見るに忍びず、涙したのです。
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