別れと出発

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 とても広い部屋でした。  その夜は大勢の児童が、それぞれの布団をくっつけて並べて、眠りにつきました。  台風通過の一夜が明けて、昨日とはうって変わった晴天です。  皆自分の下着洗いの日です。  大きい衣類は村の人達や寮母さんと呼ばれて、私達のお世話をして下さる方々が洗濯して下さる様になりました。  けれども、ハンカチ、靴下、パンツ等は自分で洗わねばならないのです。  その日までハンカチ以外の物など洗濯したことの無かった私が洗うのです。    大きな長方形の固い、洗濯石ケンをつけて、小さな手で、上級生達が洗っているのを真似て、どうにか洗えたのを憶えています。  本堂の前にある井戸で、皆、輪になって洗面器で洗うのです。  こうして一日目より親元を離れて厳しい規律の中での生活が始まりました。  私達のお寺は、荘嚴院と云って、百名前後の生徒が暮らし、残りの生徒は少し離れた隣の泉福寺での生活です。
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