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先生から渡される便りは総て封を切られて、検閲されてから児童の手元に届くので、時々、墨で黒く塗り潰されていることがあり、特にひどかった便りは、十二月の私の誕生日を家族で祝った事を記されてあったろうと思われる文面が、ほとんど判らない様に消されてあったのです。
先生が居ないときに、お日さまに翳して判読を試みたり、友に愚痴ったりしていましたが、しっかり消されてあったので読み取れずに、悔しい思いを幾度か味わったものです。
私の誕生日を祝ってくれた両親のこと等が書かれてあった文面は、「誕」の字が、薄くぼんやりと見えたので判ったのです。
今は戦時下で、しかも留守にしている私の誕生日を祝ってくれていた家族の温かさを思い出して涙したものです。
家族へ出すと時も、封はせず、先生の処へ持っていくのですが、先生が目を通して家族に知られたらまずい個所はやはり、黒々と塗り潰されて、封をされるのです。
甘えや愚痴を書いていたら必ず消されていた様です。
夕食が終わり、部屋の一角に皆集まり正座して、御住職(私達は和尚さんと呼んでいました)と般若心経をあげお話を聞いた後、八時半頃まで自習時間になり、予習復習を済ませ、家への便りを書くのが毎日の楽しみの一つでした。
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