通夜にて

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 私は恐ろしい夢を見た。  私は暗くて冷たい、トンネルのようなところにいた。  なんだか嫌な感じがして怖かったので、早くここから出なきゃと思っていると、まきちゃんが現れた。白い服を着てにこにこ笑っていた。  まきちゃんは 「早くいこう」  と言いながら、私の腕を掴んだ。  その手がゾッとするほど冷たかったのを覚えている。  あんまり強い力で引っ張ってくるので、痛くて痛くて抵抗すると、あっさりと振り解けた。  まきちゃんは笑ったまま、猫なで声で「大丈夫だよ」とか「こっちきて」とか言った。  私は掴まれた腕が痛くて、腹が立っていた。  まきちゃんが再度手を伸ばしてきたので、体をよじってそれを避け、 「やめて、そっちにはいきたくないってば!」  と半ば怒鳴るように拒絶した。  するとまきちゃんは泣き出した。  泣きながらボソボソと、 「なんで……どうして……」  と呟き、それが唸りのように聞こえた。  唸るような泣き声は、段々大きくなり、絶叫になった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加