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「もう一つだけ、聞いてもいいですか」
壮太はダメ元で、マキに聞いてみる事にした。返答次第では、この計画が失敗に終わることになる。
「あの鉄の扉、開けるための鍵はあるんでしょうか」
そう。校門から外に出られないとなると、この計画は頓挫してしまう。
マキは少し考えてから答えた。
「ない。あれは時間にならないと開かない仕組みに・・・いや、待てよ」
皆が固唾を飲んで、マキの次の言葉を待った。
「開けられない事も・・・ない」
「あるんですか」
マキは唇の端を少し上げて、悪戯っぽい目で壮太を見た。
「校庭内に止まっているバス、もしくは乗用車を扉の前まで動かせば、センサーが反応する仕組み、だったかな」
言われてみれば確かに、ここに入場する時も、バスが一旦止まるとその扉が開いたように思えた。
バスのフロントガラスから見た限りでは、外に立っている二人の黒服も、特に動いたようにも見えなかった。
「そうですか。じゃああのクラウンを正面まで動かせば…柴田さん、車は運転出来ますか」
「ああ、ちゃんと免許証もあるよ」
そういう事なら、これ以上黒服達と闘う事はない。彼等がこちらに干渉しないのであれば、仮に車を動かしたところで、引き留めには来ない。皆がそう思った。
「よし。これでここから出られるぞ」
壮太が皆に向かって安堵の表情を浮かべながらそう言った。
だが、まだ闘いは終わらない。
「言っておくが、まさか、車にキーが差しっぱなしだなんて甘い考えじゃないよな」
皆が一斉にマキを見た。
考えが甘かったと気付かされた瞬間だった。
「まあでも、面白そうだから教えてあげよう。キーは、運転手が持っている」
「マ、マキ、お前・・・」
震えたままの体でレイが責めるような視線をマキに向けたが、マキはお構いなしに続けた。
マキの目は、おかめのお面の様な不気味な目で笑っている。
「運転手は、かつて食堂だったところにいる。成功を祈ってるよ」
そう言って、壮太達の方に手を振った。
壮太が何やら言いかけたその時、スピーカーのスイッチの入る音がした。
ーテロナイトメア終了まで、後一時間ですー
それだけ言うと、スイッチの切れる音がした。
「時間がない。急ごう」
冬人はそう言うと、壮太の手を引いた。
皆も、マキを一瞥してから、後に続いた。
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