計画

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「冬人君、大丈夫?」  難しい顔をしている冬人に、希が心配そうに声を掛けた。 「あ、うん、大丈夫」  希の言葉に、冬人は我に返り、それ以上考えるのを止めた。 「分かったわ。やりたくない人は、さっきの教室に戻って。でも、その前に」  そう言うと、熊田は宗史の手を引き、教室の扉の前に歩を進めた。 「一度、君達の年齢を元に戻します。でないと、君達、また合宿所行きになるかもしれないから」  そう、前回大会の時、皆で少しずつ自分の年齢を熊田に分け与えた結果、ここに居る全員が敗者扱いとなり、今もこうして大会に強制的に出席させられている事を、熊田は憂いたのだ。 「森田君、いいわよね」  熊田に言われて、宗史は小さく頷くき、スイッチを切り替えた。  LEDが赤色に光る。  宗史のナイフは、「90」を示していた。 「じゃあ、やらないって人、ここに来て」  始めに足を踏み出したのは、やはり長田だった。  熊田の前に立つ。 「どうするんですか」  長田が聞くと、熊田に促されるまま、宗史がそのナイフを一瞬突き出した。  戻した年齢は、僅か二歳程度のものだが、この歳の二年はやはり大きい。  長田は、明らかにさっきまでより顔つきが幼くなっている。  宗史のナイフの表示は「88」に変わった。 「他にも、僕は嫌だって人は、ここに来て」  熊田がそう言うと、一人、二人と熊田の元へ向かう。 「おいおい、マジかよ…」  村瀬が呟く。  気が付くと、熊田の元生徒達は、村瀬、袴田、生田、三島、鹿井の五人しか残っていなかった。  宗史のナイフの表示も今は「68」となっている。 「仕方ないよ。僕たち以外は、運痴だから、怖いんだよきっと」  三島が口にする。  さっきまでの賑やかな教室内は、一気に寂しくなったように感じられた。 「じゃあ、僕達だけで、始めよう」  静かになった教室内に、その壮太の声はよく通った。  熊田達が揉めている間も、壮太達は作戦を練っていた。  柴田と壮太の情報を擦り合わせたうえで、一つの計画を思いついたのだ。  だが、教室内がざわついていた事もあり、その内容は、柴田、壮太、香織、そして横で聞いていた白鳥しか把握していなかった。  
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