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「私達から奪うって、なかなかいいアイディアだと思ったんだがなあ。残念だよ」
そう言ってから、マキは香織の手元を見た。
「ソレが使えるかもって、誰が気付いたのかな?」
誰も答えない。
こちら側にとってはお手柄でも、監視者にとってはそうではない。
ここで希の名前を挙げる事は、監視者に目を付けられる事のように思われたからだ。
「まあいいか。おい、ハク」
マキは、教室に一歩踏み行ってから、白鳥に問うた。
「なにかしら」
「ハクもこいつらと共謀してるのか?」
「いえ、私はあくまでも傍観者よ」
「そうか。じゃあ私もここでお手並み拝見といこうか」
そこまで言うと、近くの椅子にレイを腰掛けさせ、自身も倒れている椅子を起こして腰掛けた。
その様子を訝しんだ冬人が、教室の入り口に歩み寄って、マキを見て聞いた。
「僕達が居なくなってから、仲間に連絡するんじゃないんですか」
「なるほど。ただの単細胞ではないようだな。いや、気を悪くしないでくれ」
そう言って、マキは小さく笑った。
「ここでは一切の電波という電波は遮断されている。まあ、唯一微弱電波を発しているのは、そのナイフだけだ」
だから、このナイフの情報が、監視者のパソコンに表示されるという事だった。
「そういう訳で、インカムその他無線機類は、ここには持ち込んでない。信じるか信じないかは自由だがね」
その話を聞いて、壮太も疑問を抱いた。
「外部との連絡は?」
「それも、時間までは完全シャットアウトだよ。唯一、職員室のPCは有線接続されているが、出席者の名前と、それぞれののエネルギー獲得数、そう、今ハクが見ている情報がそのまま総理だ・・・いや、本部に送信されるだけで、メールなどの会話は一切ない」
「そこまで徹底してる理由が分かりません」
壮太は更に畳みかけた。そんなの、デメリットしかない様に思われたからだ。
しかしマキは、口が軽いのか、何の迷いもなくその質問にも答えた。
「傍受、ハッキング…」
マキは、一呼吸おいて続けた。
「この競技は、まだ外部に知られては困るのだよ。だから、あらゆる危険因子は排除してある。納得してくれたかな?」
ここで、美香に一つだけ疑問が沸き上がった。
あの放送は、外にも聞こえてるんじゃないだろうか、と。
しかし、美香はその疑問を飲み込んだ。
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