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香織は振り向かず、真っ直ぐに食堂の入り口から飛び出した。
その背後にはジン、少しだけ遅れてコウが迫っていた。
香織は入り口から出ると、二メートル程先で素早く振り返り、ケースを足元に落とした。香織が外に出ると同時に、入り口に用意していたロープの端を握っていた潤と生田がそれを力任せに引く。
前を走っていたジンは、その余りにも目立つトラ柄のロープにいち早く気付き、それを跨ぐように外に出たが、大柄のジンの背後から追ってきたコウは、そのロープに気が付かず、足を引っかける。
「うわわわっ」「うおっ」
コウが勢いよく突っ込んできたため、潤と生田はロープごと引っ張られた。
派手に転んだコウは、香織の前で立ち止まったジンに体ごと突っ込んでしまう。ジンはよろめきながら、思わずコウの方を見てしまった。
倒れているコウのそばに、素早く冬人と壮太が駆け寄る。香織はそこ目掛けて、ケースを蹴飛ばすと、目の前でよろめいているジンにスタンガンタイプのソレを突き付ける。
壮太は、手元に滑り込んできたそのケースを素早く開けると、冬人の前に向けた。
冬人はその中の一本の刃の部分を手に取ると、コウの頬に柄の部分を押し付けた。
ナイフのウィンドウとLEDが光り、香織以外、大綱高校側の全員が、コウの周りを囲む。
「ホントに、上手くいった」
冬人が呟くと同時に、そこにいる全員で、コウにナイフを突き立てる。それは一瞬で良かった。
コウが老人になるまでに、一秒と掛からなかった。
ジンもまた、香織によって老人と化し、その周りには熊田達がいる。
ジンもコウも、余力はあるようだったが、すぐに熊田達がジンを、冬人達がコウを押さえつけると、彼等は抵抗はしなかった。
そのままコウの服を調べてみる、が、そこには車のキーらしきものはなかった。
ジンが運転手でない事は始めから分かっている。
「持ってない、な」
「ええ、流石にこちらの思惑通りには進まないわね」
コウを調べた壮太の表情に、落胆の色が浮かぶ。
事前に立てた作戦。
それは、ここに来る前、正面玄関前で立てたものだ。
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