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「まんまとマキの口車に・・・いや、なんでもない。それで、なぜ君達はここに来たんだ」
「車のキーを取りに来たんだ」
やはり三島が答えた。
タカは、三島に、素直でいいな、と言いながら、更に続けた。
「マキに騙されたな、君達。車のキーなら、ここにはない」
落胆の表情が皆に浮かんだが、タカはすぐにこう続けた。
「キーなら、付けっ放しのはずだが」
皆の脳裏に、マキのその時の怪しげな笑みが浮かぶ。
「それじゃあ、あいつは時間稼ぎのためにあんな嘘を」
「違うな」
村瀬のその言葉を、タカはすぐに遮った。
「マキの事だ。私と君達を対峙させてみたかったんだろう。でも、良かったよ。うん。君達は実にいい」
「もう、いいですか」
冬人はタカの目を見据えながら言った。
「僕達はここを出ます。止めるというなら・・・」
「心配しなくていい。私達は君達のする事に手は出さんよ」
「でも、たった今この人達は手を出そうとしたじゃないですか」
冬人は、足元で蹲っているジンとコウを見た。
「それは、君達が試作二号機を持ち出したからだ。でももういい。それも不問としよう」
それでも、緊張の余り、その場にいる誰もが、その場から動けなかった。
「私がいると迷惑なようだな」
タカは最後にそう言うと、背を向けて再び食堂に戻っていった。
「時間がない、急ごう」
タカの姿が食堂の中に消えたのを確認してから、冬人がそう言った。
その言葉を皮切りに、全員が校門へと急いだ。
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