誤算

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 タカが食堂に戻ると、遅れてジンとコウものろのろと入ってきた。 「痛ててて…尾てい骨からもろ落っちゃいましたよ」  お尻に手を当てながら、ヨシはタカの方を見た。 「で、あの子達、なんだったの」  アンはそこから動くことなく、冷静にタカに聞いた。 「ああ、これからここを出るそうだ」 「なるほど、ね」  アンはパソコンから眼を離すことなくそう言った。 「それで、こんな結果に」  パソコンは、殆どの生徒が獲得年齢数ゼロである事を表示している。 「まあいいわ。まだプロトタイプの段階だもの」 「だが、既に予約は殺到してると聞いたが」  タカのその言葉に、アンは微笑みながら答える。 「焦らして値を吊り上げるのも、いいんじゃない?それに、まだこれは始まってもいないんだから」  タカは椅子に腰掛けると、腕組みして、今さっきの事を思い返していた。 「それにしても、頭の回る奴がいたもんだ。彼等は、私達の思惑以上の事をしてくれる」 「それも、嬉しい誤算ってとこね」 「ああ。ボーナスが木偶の棒じゃ面白くないからな」 「そうね。少しは抵抗してくれなきゃ、ただの狩りになりますから」  1-Aの教室では、マキが校門の方を眺めている。 「あいつら、上手くやったかな」 「そんな事いって、あの子達が失敗したらどうするつもりなの」  白鳥は、パソコンを眺めながら、更に続ける。 「確かにあの男子校の生徒じゃつまらないのは分かるわよ。でも、こっちの子達まで敗者にならなかったら、あなたの首が飛ぶわ」 「確かに、な」  マキは目を細めた。 「でも、あいつらならきっとうまくやるさ。上手くやって、そして」 「楽園への切符を手に入れる、と?」 「そういうこと」  そう言ったマキの表情は、同僚である白鳥でさえ背筋が凍りそうになる程冷たかった。
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