誤算

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 そこだけではない。  よく見ると、その通りにある、民家と民家の僅かなスペース全てに、ロープが張り巡らされている。 「どうしたの?」  後から出てきた香織が、壮太に問う。 「裏道が全部、封じられてる」 「離さんか」  その叫びに、みんながそちらを向いた。  声の主は、商店から出てきた老人だった。  熊田は体を捻って、老婆を老人の正面に向けると、じりじりと後退しながら言った。 「ご老人にしては、随分動きが機敏じゃなくって」 「なんじゃなんじゃ」 「どうした、どうした」  気が付くと、民家から出てきた夫婦達や、公園から出てきた老人達に、皆が囲まれていた。 「まさか、この人達、全部・・・」  熊田の頬に汗が流れ落ちた。 「熊田さん、何をして…」  言いかけた壮太の声を遮って、熊田が叫んだ。 「皆、逃げて!この人達は全部あいつらの」  言われるが早いか、周りを囲んだ者達が、一斉に飛びかかってきた。  手にはスタンガンを持っている。 「え、ど、どうして」  それを突き付けられた村瀬が、一瞬で気を失った。 「皆、気を付けて!それは本物の・・・」  言いかけた熊田も、背後から忍び寄ってきた女の手で、気絶させられた。 「僕達には、手を出さないはずじゃなかったのか」  初撃をかわした壮太が叫んだ。 「それは、競技場での話だ」  そのセリフを最後まで聞くことなく、壮太もまた、背後からスタンガンを当てられた。  次々に気絶していく仲間達の姿に怯えながら、美香はあることに気付いた。 ー注意してくださいー  あの放送は、競技者に向けられたものではなく、この人達に向けられたものだったって事。そして、聞かれても困らないのは、周りを監視者が囲んでいたからって事。  だが、今更気付いても遅い事は明白だった。  スピーカーのスイッチが入る音。 ーただいまの時間をもちまして、テロナイトメア、プロトタイプ2を終了しますー  スピーカーのスイッチが切れる音。  最後まで抵抗した香織も、その放送を聞く事はなかった。 
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