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「目が、覚めた?」  香織が目を開けると、心配げな顔で美香が覗き込んでいた。  体に少し振動を感じる。 「こ、ここは?」  右手で髪を掬いながら頭を振る香織に、後ろから冬人が覗き込む。 「バスの中。それも、来た時のとは違う…」  言われて香織が顔を上げる。    夜?  香織は最初、そう思った。  だが、よく見ると、フロントガラスから微かに見える外の風景はオレンジ色をしている。  そのまま窓の方を見ると、そこに嵌められているのはガラスではなかった。 「プラスティック?」  香織が呟くと、美香が頷いた。 「何が、どうなったっていうの?」  香織は、まだ少し残る頭痛を堪えながら、これまでの事を思い出そうとした。 「全員、気が付いたようですね」  バスの先頭に座っていた黒服の女が立ち上がった。 「早く説明しろよ!全員の意識が戻ったら、説明するって言ってたよな」  そう言ったのは、先頭に一番近い席に座っている村瀬だ。  そう、このバスには、校門から脱出を図ったメンバーが皆乗せられている。  柴田以外は。 「なんで俺達が敗者扱いなんだよ」  袴田も、村瀬に続いて怒りを露わにした。  敗者扱い?  と、いう事は、これは「楽園」行きのバスって事なのか、と、香織は気付いた。 「どういうことなの」 「それを、これから説明するみたい」  香織の問いには、通路を挟んで反対側の席にいる壮太が答えた。 「説明しますので、静かにして下さい」  その女にそう言われても、車内の喧噪は収まらない。 「静かにして。まずは話を聞かなきゃ、でしょ」 「でもさあ」  熊田に諭され、村瀬達は口を噤んだ。 「恐れ入ります」  その女は、熊田の方を見て、その冷徹な表情を崩すことなくお辞儀をした。  その女は顔を上げると、一度全員を一瞥してから語り始めた。 「始めにご説明した通り、テロナイトメアは、競技として扱われております」 「だから!」 「村瀬君!」  口を挟もうとした村瀬を、熊田が再び諭す。  その女は、一度言葉を噤んで村瀬を睨んだが、すぐに話を続けた。 「説明するまでもありませんが、試合を途中で投げ出したら、普通どういう扱いになるか、お分かりですよね。そう、それは『不戦敗』という事になります。よって、競技の途中で投げ出したあなた方は、敗者扱いとなります」  
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