楽園

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「熊田さん、ここは無人の街って言ってませんでしたか」  壮太が熊田に聞くと、胸を押さえながら、熊田が次の言葉を口にした。 「もっといる、わ。子供はね。この子達は皆、全国の孤児院から、集められた、身寄りのない、子供達・・・」  熊田の息が少しずつ荒くなっていく。 「それは、街の住人として?」  香織が聞くと、更に苦しそうにしながら、熊田は答えた。 「生贄として、よ。この子達は、最初から、生贄、として集められた、子供達」  そこまで言うと、熊田は跪き、二粒、三粒と涙を零した。 「可哀そうな、子供、達…」  熊田はそのまま両手で顔を覆った。  あかり、満里奈、菜美も、その目から雫を落とした。 「なんて、事・・・」  香織も目の前の子供達を思うと、自然に拳を握ってしまう。 「あなた達の住まいはこちらになります」  突然、バスの前方から黒服の女が現れ、案内するように手を差し出した。  無機質のその女の言い回しに、香織が切れて飛びかかろうとする。  すぐに気付いて、そばに居た壮太と冬人、正治が香織を押さえつけた。 「離して!こいつら、許せない!」 「落ち着け、香織ちゃん、こいつを殴っても、何も変わらないって」 「それでも、許せない者は許せない」  三人でも抑えるのがやっとの香織の前に、三島が顔を覗かせた。 「何をそんなに怒ってるの」 「何をって、あんた・・・」  三島の、まだ完全に目覚めていない様かの(まなこ)と、そのとぼけた言い様に、香織の怒りが少し散った。 「分かった、分かったから」  そう言われて、壮太達はその手を離した。  大袈裟に手を振って見せてから、香織は女に話しかけた。 「あなたが、質問に答えてくれる人って事でいいのかしら」  その声は、まだ少し震えている。 「私だけでは御座いません。ここにいるスタッフ全員が、どんな質問にでもお答え致します」  その乾ききった声に、再び怒りが沸き上がってきたが、拳を握りしめる事でそれを抑えた。  香織は、公園を指差して聞いた。 「この子達を・・・開放する方法って、あるのかしら」  ゆっくりと腕を挙げ、指差したその手も、大きく震えていた。 「そうですね、日本人の平均寿命が八十一歳として、十一歳のお子様を救うには、七十億詰んで頂ければ、解放出来る、かもしれません」
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