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サプライズより必要なのは、この気持ちを伝えることだったんだ。シャツを握りしめたままソファに寝転んだ。
涙がなぜかこぼれてきて、斗陽のシャツを少し湿らせた。気が付いたら僕はソファで眠ってしまっていた。
ふと目が覚めて、慌てて体を起こした。どのくらい眠っていたのだろう。握りしめていた斗陽のシャツはくしゃくしゃになっていた。
「斗陽……帰ってきてないんだ」
携帯を取り出して、着信があったことに気が付いて。驚いた。外出の時は音がならないように設定してあるから気が付かなかった。斗陽からだ。
急いで斗陽の番号を呼びだす。数回のコールのあと、いつもと変わらない声に涙が出そうになる。帰ってきてと頼んだ次の瞬間にドアがかちゃりと開いた。
そしてそこには斗陽が携帯を耳に当てたまま立っていた。
転がり込むように腕の中に飛び込む。そして……「ごめんなさい」と誤った。
「どうしたの?泣いてる?一体何があったんだ」
僕がどれだけ好きか、きっと伝わることはないんだろうな。それでもいい。今ここにいる一瞬一瞬が宝物だから。
「お帰りなさい。そして、今日はどうしても言いたいことがあるから聞いて」
「俺もどうしても言いたいことがあるんだけど、話していい?」
お互い相手を見つめると、くすっと小さく笑った。
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