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「少しはにかんで、今にも泣きそうなその顔。十年前のあの日と同じ」
「将来の約束なんて斗陽からもらえるなんて思いもしなかったから、嬉しくて泣きそう。まさかこんな形で斗陽から指輪をもらえるなんて」
「俺にもくれる?」
「何も……用意してないんだけれど」
「俺だけに見せる顔、見せてよ」
「……ぅん」
ほんの少しのすれ違い。ほんの少し言葉が足りなかっただけ。重ね合わせた肌が、お互いの気持ちを伝える。触れあったところから広がる熱は、麻薬のように身体中を駆け巡る。
「斗陽、あ……なんか今日、変……」
「変じゃないよ、溶けそうなその顔。俺しか知らない。誰にも見せないない、これからもずっと……」
「これから……も?……ずっ…と?」
二人で漂い、たどり着く先はどこなのだろう。未来はいつも不安定だ。しかし、たとえどこに流れ着こうともお互いがいれば、怖くない。きっと明日も二人で笑っていられる。
「そう、ずっと、永遠に。もっと見せて、俺の一番好きな顔」
時が流れても、二人でいることの意味は十年前から変わらない。そしてこれからも。互いが相手を思いあえれば。
【完】
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