89人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
第2話 睦人の想い
別に特別な日じゃない。解っている。単なる三百六十五分の一日。
それでも恋人なら……この日の持つ意味は大きく違ってくる。
僕が斗陽に好きだと言ってもらえた日。僕の未来が開けた日、その日を二人で過ごす。付き合っているって事はそう言う事だと思う。
付き合いが長い分、今までそんなこと考えもしなかった。けれど二人で一緒に過ごして十年。今日こそきちんと想いを伝えたい。
片思いだと思っていたのに。諦めた恋だったはずなのに……まさか手を差し伸べてくれるなんて思いもしなかった。あの日。
それが十年前の今日。怖くて踏み出せなかった僕を見つけ出してくれた日。今でもあの時は忘れられない。
「どうして君が、こんな僕なんかと......」
「どうしてって?それ聞くかな。一世一代の告白なのに。もう一度言うよ。……好きです睦人」
「え……」
気がついた時には僕の恋愛のベクトルは同性に向いていた。初恋は幼稚園で出会った淳くん。そして、自分が他の子とは違う価値観だと気づいたのは小学生の時。それ以来隠して生きてきた。
誰にも内緒の片思い、それが僕の恋愛のデフォルト。
最初のコメントを投稿しよう!