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  「私は消えることにした」  片付けるのが面倒で、出しっ放しにしていたビデオカメラをいつものように再生すると、映像の中の彼女はそう告げた。  ビデオカメラはリビングの中央に据えられていた。  北側にはソファが置かれ、その向かいにテレビ台、そして部屋の隅には最低限の本棚やタンスなどが並べられている。その均衡の取れた配置を無視し、最優先と言わんばかりに中央に座したビデオカメラはどこか異様な光景だった。  三脚に置かれたビデオの、小さなディスプレイを私は立ったまま見つめていた。  朝起きたら、このビデオを再生し見ることが日課だった。何かが録画されていることもあるし、何も無い日もある。  ここに越してきて三年、毎朝その映像を確認することが当たり前になっていた。 「……そう」  返答が無いことは分かっていたが、私は映像に向かって言葉を返した。  また一人、この部屋から人が減っていく。寂しさは無かったが、虚しさは残った。  彼女は誰だったか。  マイコか、ランか、リリアか。『私は』と言っていたから、ダイキではないことは分かる。  彼女が居なくなったからといってその分部屋が広くなるわけではないが、何となくこの部屋から人の気配が薄まった気がして、少しばかり居心地が悪くなった。  私はカメラの電源を切ると、パジャマから外着に着替え、出かける支度を始めた。  
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