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誘われなければ永遠に来ることはなかっただろう、若者たちが写真を撮るために訪れそうな、クリームが山盛りのかわいいパンケーキを食べながら私は切り出した。
「また一人、居なくなったの」
由亜は口いっぱいにパンケーキを頬張りながら、顔を上げた。
そして流すでもなく、大それた反応をするでもなく、ただにこりと笑う。
「そっか。よかったね」
由亜は、私の病気である解離性同一障害……所謂『二重人格』を、唯一知る友達だった。
いや、人格は二人以上いるから『多重人格』と言うのだろう。元々友達など多くはなかったが、それを知って私の元を去っていかなかったのは由亜だけだった。
由亜はいつものように、口下手な私の会話をリードする。
「それで、あとは何人残っているの?」
「はっきりはしないけど……三人くらい」
「そっか。もう少しだね」
三年前から一人暮らしを始めて、私の人格は順調に減り、私自身に統合されつつあった。
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