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   *  薄ぼんやりとした視界が徐々に鮮明となり、私は覚醒した。  私は台所に立っていた。  夜の八時。少し記憶が飛んでいる。なんとなく虫の知らせがして、私はビデオカメラを再生した。 「僕は消えることにした」  つい先程追加されたらしい動画には、私の姿が映っていた。  言い方や表情からして、ダイキだろう。彼らが申し合わせたように同じセリフを発することができるのは、私――葵と違って、彼らには意識の共有があるからのようだった。 「……そう」  私は返事をした。  先月、ランが消えた。先々月、リリアが消えた。  私は相変わらず正社員で働いてはいなかったが、営業事務の仕事はうまくいっていた。少しばかり担当を増やされ、業者と電話で受け答えをする機会が多くなっていた。つらさもあったが、最近ではそれも慣れ褒められることも増えてきた。  そんな心理が人格の統合に反映されているのかもしれない。  もう、私には自分を守ってもらうための別人格が必要無くなったということだ。殴られそうになったら殴り返す人格も、しこたまに蹴られたら幼児のように泣いて謝る人格も、私には必要無くなっていた。  
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