25人が本棚に入れています
本棚に追加
だけれど、この虚しさはなんだろう。
私はまた少し広くなった部屋に佇み、ぼんやりと考えた。
やっと、皆と同じになれる。病気が寛解すれば、きっと私の人生はもっといい方向に向かう。
なのに、この気持ちは何なんだろう。
急に携帯電話が鳴り出し、私は我に返った。
スマートフォンを購入するお金が無く、未だに型の古いそのフューチャーフォンを手に取る。メールだ。
メールを開けた瞬間、間を開けずもう一通メールが着た。その両方が由亜からだった。
『明日の待ち合わせ、十時に駅でいいかな?』
『ごめん、葵……メールの宛先間違えちゃった! 忘れて!』
間違いメールだったようだ。私はすぐに、分かった、気にしないでと返信した。
携帯を机に置き、そしてそっと振り返る。
……誰に送ったメールなのだろう。
私は由亜とはそれなりの時間を共にしてきたが、その交友関係をほとんど聞いたことがなかった。
由亜にも、私以外の友人知人はいる。それは当たり前だ。
だけれど、私は無性にそのメールの送信先が気になった。
最初のコメントを投稿しよう!