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メールに書いてあった指定の駅は、うちの最寄駅から二つ先だった。
その日は土曜日で、私は休日だった。私は十時より三十分前にその駅に着いた。
何を馬鹿げたことをしているのだろう。女性同士といってもこんなことをしてはストーカーのようなものだし、何より待ち伏せが由亜に知られたら嫌な気持ちにさせるだろう。
そう分かっていたのに、自分を止められなかった。
駅前のカフェでコーヒーを頼み、持ってきた雑誌で顔を隠しつつ、由亜を待った。時間に正確な由亜は、いつも私にもそうするように、十分前に駅前に現れた。
次の電車がやってくる。駅から出てきた数十人の人の中から、一人に向かって由亜が手を上げる。
それは、男性だった。
由亜と同い年くらいの、モデルのようにすらりと背の高い、格好のいい男性。その場に立って少し笑い合うと、手を繋いで通りを歩いていく。
……おそらく、恋人だ。
恋人がいたなんて、知らなかった。
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