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この物語は人間の表と裏、そして、人ならざる者の世界を描いた物語である。
じっとりとした 雨が続く梅雨の真っ只中、僕、猪鹿 誠(いじか まこと)は目覚ましベルに無理矢理叩き起こされ、急いで制服に着替えて学生鞄を持って廊下を走り抜け食堂まで行く。
「おお!おはよう猪鹿!今日もいつも通り寝坊かい!?ちょっとまっておくれ、そんなこともあろうかとお茶漬けを作って置いたんだ。台所に置いてあるから食べて行きな!」
そう言って朝食を摂っている寮母さんが話しかけてきた。
相変わらずふっくらとした体格の良い丸みを帯びたお腹と顔をしている。
「おはようございます!寮母さん!有難うございます!」
「早く行かないと遅れちまうよ!」
カッカッカっと寮母さんは爽快に笑う。
「はい!」
そこにいつも通り、水を差すように一人の男の声が聞こえてきた。
「あー、おはよう。猪鹿君かい。やぁやぁ、今日も忙しいねぇ、良いねぇ、若いのは。青春だねぇ」
「いやいや、禅怪(ぜんかい)先生、先生も早くしないと遅れちゃいますよ」
「おれかい?おれは良いんだよ。教師だし。少し遅れても謝ってりゃ。ちょびっと同僚の先生と生徒の信頼を少なくするだけだからねぇ。それに、おれには自転車があるし、まだ間に合うんだよ。 でも、君はどうだい?猪鹿君、君は歩いたら遅刻するのかもしれないけど、いや、でも、走ればギリギリ間に合うのか。まあ、精々頑張れ」教育委員会はよくこの人に教員免許を渡したなとつくづく思う。
僕はお茶漬けを急いで食べた。今日のは塩っ気が少し多いかな。
「それじゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「また後で、猪鹿君」
「はい」
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