第1章 事件の前兆

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「はあはあ、なんとか・・間に合った」 「おっはよう!猪鹿君!」 そう言って明るく声を掛けてきたのはクラスメートの日向 陽子(ひゅうが ようこ)だ。 明るめの茶髪で背はこの年頃の女の子としては背が高く、僕と同じくらいだ。(170cmくらい)感情も表情も豊かなのが特徴のショートカットでポニーテールの元気で可愛い女の子だ。 「おはよう。日向さん」 日向は愉快そうに僕の背中をばんばん叩いて 「あははは!毎朝毎朝良くそんな陰気そうな顔できるよね!あはは」 「ちょっと、痛い!痛いよ!やめて!日向さん!」 しかも無茶苦茶失礼なことを言ってるぞ。こいつ。 まあ、裏表が無いのがこいつの良いところなんだろうけど。 「はーい、そんじゃ、朝のホームルーム始めるぞ」 日向と楽しく話している所へ、担任の禅怪先生がやって来た。  さて、昼休みの時間までにかなり時間があるから、それまで僕が通う私立犬神中等教育学校の歴史云々について語ろうと思う。  うちの学校、私立犬神中等教育学校は中高一貫校で豊かな自然に囲まれている。 最初に建てられたのは明治後期くらいかららしく、学校の歴史も古い。いや、この地域全般が歴史的に見ればかなり価値のある場所らしい。中には、その気になれば江戸時代由来の品が学校内や家で見る事が出来る。また、山、森などの自然に囲まれていることもあって、一番近くの町でも、歩いて45分、自転車で大体25分くらいの所にある。 私立犬神中等教育学校はこれでもか!と言って良いほどの田舎っぷりなので、自宅まで行き来するということになると6~8時間掛かる事がざらでは無い。その為、全寮制という事になっている。その全寮制が少し変わっているのである。 男子寮、女子寮が分かれているのは当然なのだが、(分かれていなかったら今頃とんだ破廉恥学園だ何だのと騒ぎ立てていた頃だろう)もう一つ、若葉荘という名の寮が曲者なのだ。 この若葉荘という寮は学校側から問題がある生徒を入れておくための言わば問題児だけが住んでいる孤島のようなものなのだ。それは決して、教師とあっても例外では無い。うちの担任の禅怪ココ先生なんかがそうだ。過去に何があったか知らないけどまあ、ギャンブルとかたばことかお酒とかしていたら当然そうなるだろう。 他にも数人いるらしいけど僕が知っているのは一人しか知らない。何故かって?
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