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話を戻そう。葵くんは前世が男の俺が男である自分を1人の男の子として好きになったのが衝撃的だったのかまだワタワタしている。
「それでもだよ。それでも私は葵くんが1人の男の子として好きなんだ。この好きが男としての物か、女としての物かはわからないけど、私が葵くんの事を好きなのには変わりはないよ。やっぱり、いくら今が女でも前世が男はいや?」
言っておいてなんだが、最後の言葉は自分でも卑怯だと思う。案の定。葵くんの瞳はウルウルとしていて泣きそうだ。
「嫌じゃないよ!雪姉はいつもボクに優しくしてくれるし、守ってくれてるもん!そんな雪姉が嫌いな訳ないよ!ボクも雪姉が大好き!」
葵くんは大きな声で言い終えると俺に抱きついてきた。葵くんの言葉に今度は俺がワタワタする番だ。
「ほ、本当?そ、それはどっちとして?幼馴染?それとも女の子として?」
声が震えてしまう。
「多分。雪姉の事を女の子として好き…なんだと思う。今ははっきりとわからないけどきっとそう」
葵くんは涙で潤んだ瞳で微笑み俺を見上げてくる。そんな葵くんを見ている俺の視界も涙でぼやけている。
「ありがとう。嬉しいよ」
俺は葵くんをぎゅっと抱きしめる。服越しに葵くんの体温が感じられる。早鐘のように脈打っているのはどちらの心音かわからないが何故か安心できる。
「ボクも嬉しいよ」
俺を見上げてきた葵くんの視線と、俺の視線が交差した。観覧車はもうそろそろで頂上にくる。葵くんが何かを期待する様に、そっと目を閉じた。その意図を察した俺は顔をゆっくりと葵くんの顔に近づけ、互いの唇を重ね目を閉じた。
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