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玄関で靴を履き外に出る。そして、俺は自然と葵くんの手を握り歩き始める。これは幼い頃からの習慣だった。この様子をみた当時の悪ガキが葵くんを揶揄い、腹を立てた俺はその悪ガキに軽くお灸を据えてやった。
「電車で隣街に行って駅前ビルで遊ぶ?」
歩幅があまり広くない葵くんのペースに合わせ、ゆっくり歩きながら葵くんに提案してみる。俺の住んでいる街の駅前よりも隣街の駅前の方が遊ぶ所が充実していて、駅前ビルとは1つのビルにボーリングや、ダーツにビリヤード。カラオケにネットカフェとゲームセンター。極め付けは貸し卓の雀荘まで入っている建物だ。しかも屋上はミニ遊園地みたいになっており、子供向けの乗り物や小さな観覧車まであったりする。そこなら1日いても充分に暇は潰せるはずだ。
「うん!行きたい!」
葵くんがとてもいい笑顔で頷いたので、行き場所は決定した。
駅から電車に乗り、数駅過ぎた所で目的の駅に着いたので電車から降りる。
「す、凄い人だね」
「そうだね。葵くんはぐれない様にしっかりと手を握っててね」
電車から降り、改札に向かうまでの通路は人でごった返して降り、あの有名なセリフを呟きそうになってしまった。こんなに人が多い中で、はぐれてしまっては小さな葵くんを見つけるのは至難の技だ。それに美少女な外見の葵くんは変質者に誘拐されてしまい、あんなことやこんなことをされてしまい、お嫁…では無くお婿に行けない体にされてしまう可能性もあるので、俺が守る他ない。
「わ、わかったよ」
俺が葵くんを守り抜くと言う強い使命感とともに言った言葉は、緊張感を含んで葵くんの耳に入ったのか葵くんはコクコクと頷くとぎゅっと俺の手を強く握り返す。それを確認した俺は、葵くんの手を優しく握り返して、目的地の駅前ビルに向け歩き出した。
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