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互いに何曲か歌うとカラオケをやめて屋上のミニ遊園地に向かう。ミニ遊園地は家族連れで溢れていて、子供達の元気な声がしている。
「少し、休もうか」
「うん」
俺は空いているベンチを見つけ、葵くんと並んで座る。
「今日は楽しかったね。満足した?」
「うん!とても楽しかったよ!」
俺の問いかけに葵くんは満面の笑顔で頷く。
「でも。最後にあれに乗りたいな」
そう言って葵くんは小さな観覧車を指差す。観覧車の下には順番待ちの列ができているが、人数は其れ程。多くないので、直ぐに乗れると思われる。
「うん。良いよ。行こうか」
「あ。その前にお手洗い行ってくるね」
葵くんは立ち上がると、お手洗いに向かい小走りで走っていった。葵くんは多目的トイレがある場合はそちらを使うが、ない場合は女子トイレを使用する。昔。公園の男子トイレに入った時に変質者に悪戯されそうになった事がある。その時は別の人が入って来たため、事なきを得た。だが、もし人が入ってこなかったらと思うとゾッとする。入ってきた人は葵くんが変質者に無理やり男子トイレに連れ込まれたと思ったそうだと、後から葵くんの母親にきいた。それ以来。葵くんは出かけ先でトイレに入る時は、多目的トイレか女子トイレを使用している。高校でも女子トイレを使用している。それは私を含めた女子生徒が、葵くんを男子トイレ行かせて男子生徒に襲われたらどうするんだ!?と言う事を学校側に伝えた為だ。男子生徒は猛反発したが女子生徒の勢いに負けた。葵くんは女子生徒からも男子生徒からも人気があり、皆の妹(?)的な存在だったりするが、葵くんは誰にも渡さない。
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