さよなら

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 お母さんが大好きだ。  お母さんは美人だし、大人になったらお母さんと結婚したい。  僕はお母さんといっぱい喋りたい。  給食で何を食べたとか、休み時間の出来事とか、帰り道に猫を見かけたとか、たくさん喋りたい。  ずっと一緒にいたいけど、お母さんは朝になると出掛け、帰って来るのは夜遅くだ。  お母さんは忙しいのだ。  夜になって、お母さんが戻ってくると、僕は眠気をこらえてずっとお母さんと喋っている。  夜更け、布団の中で僕はお母さんに訴える。 「ねえ、お母さん、ずっとお母さんのそばにいたいよ」 「ごめんね。夜はそばにいてあげるから」 「朝も昼もお母さんと一緒にいたいのに」 「ごめんね、それは無理なのよ」 「お母さん」 「なあに」 「なんで死んじゃったの?」 「お前のパパのせいさ!」 「パパを憎んでるの?」 「お前のパパを呪い殺してやる」 「パパも死んだら僕はひとりぼっちだよ」 「あたしがついてるよ。夜になれば一緒にいてあげるから」 「お母さん、ずっとそばにいてね。とっても淋しいんだ」 「お母さんはずっとそばにいるよ。どこにも行かない。そばにいて、ナオ君のことを見守っているから」 「ありがと」  太陽が昇ると、すっとお母さんは消えてしまう。  僕は枕を抱きしめて、ようやく眠りに落ちる。  お母さんがパパに殴り殺される夢をみて、泣きながら目を覚ますまで。
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