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「雪弥さん、あのーーー」
「ーーー吸いたい」
私に視線を流しそう低く呟いて歩き出す雪弥さん。
自然と足が後を追う。
宴席の賑やかな声をあとにして鈍色に浮かび上がる桜の花びらの間をすり抜けて。
団体の花見客が多かった広場を離れ遊歩道を歩いていくと寒さに負けず花見をしているカップルとすれ違う。
みんな寒さをお互いの体温で補おうとでもしてるのか距離が近い。
「ゆーきや、さん」
「はい」
「さむいですね?」
「そろそろ俺は挫けそうです」
「ふふ、挫けそうとか」
「だって寒い」
そう言ってほんとに寒そうに肩をすくめる雪弥さんの隣に並んだ。
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