孕んだ熱

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孕んだ熱

だるい体を少しだけ起こし、ベッドに横になりながらサイドテーブルに置いてあった香水の瓶を手に取ってテスター用のスティック状の紙に香水を吹きつけて軽く扇いだ。 ベルガモットとシトラスベースの透明感のある香り。 「ーーー……うん、うぅーん……」 爽やかなのは間違いない。 だけど、クセがなさすぎて今ひとつもの足りない。 「高校生っぽいのかなー……」 んんん……。 だめだ、うまく頭働かないや……。 テスターを置き、もう1度ベッドに倒れ込み目を閉じて文章を考える。 入社してから初めて任された新商品の男性向け香水のPR文。 もう提出期限まで時間がないのに熱を出してしまった私。 働かない頭でさっきから考えているんだけど、この香水ならでは!という謳い文句が見つからず、別の意味でうんうん唸っていた。
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