風見鶏の館

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「なぁ、もうちょっとコマシな場所あったやろ?」 と、不服そうに言いながらも目の前に置かれた白い皿の中身を綺麗に平らげていく陽平。 「ここ、本当に良いの?周り、スーツ族だらけだけど……。」 僕らは異人館を後にして遅めのランチを取っていた。 昼時を外してはいるものの、見回してみても回りはスーツにネクタイ姿のサラリーマンしかおらず、常にスタイリッシュな万由利は兎も角、草臥れたジーンズに汚れたスニーカーを履いているのは僕と神山だけだった。 「大丈夫。市の職員用の食堂だけど一般人も利用できるのよ。地元民なら、みな知っとうよ。」 と、甲高いよく通る声で万由利が言った。それでもおどおどとしている僕を見て 「大体、あんたらみたいな貧乏学生に北野のお洒落な店で食べて支払えるお金がどこにあるのよ。380円のここのカレーライスが妥当でしょ?」 「ははぁ、ごもっとも。」 と、大袈裟に言うと神山は水を汲みに立ち上がった。 「ーーー万由利は良かったの?お洒落な店で食べたかったんじゃないの?」 貧乏学生の僕らとは違って万由利の実家は会社を経営している。大阪市内で僕と神山同様一人暮らしをしているけれどその生活レベルは明らかに高いものだった。 なので、市役所の食堂に連れて来られたのも僕にとってはかなり意外な出来事だった。
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