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「俺、阪急で帰るわ。梅田で探したい本があるねん。阪急の方が降りて直ぐ本屋行けるしな。」
僕がぼんやりと考え事をしていると不意に神山が言った。
市役所の食堂で遅めの昼食を済ませた後、山側に向かってぶらりぶらりと三ノ宮駅まで三人でやって来たところだった。
丁度、駅の時計は3時を少し回った所だった。まっすぐ帰るにはまだ時間もある。
「えっ、じゃ、僕も付き合うよ。」
僕も見たい本があったしそう言うと
「いや、ええよ。万由利もお前もJRの方が便利やろ?」
「えっ、でも……。」
「人の好意を無駄にすな。」
と神山は僕にだけ聞こえるように耳打ちすると
「じゃっ、そう言うことで。」
後ろ手振りながら歩き出していった。神山の突然の好意に僕は戸惑いながらも隣にいる万由利を伺うと
「神山ぁ、明日の朝イチ、住居学論、ちゃんと来ないと単位ヤバイからねぇ。」
と、一段と高い声で神山の後ろ姿に叫んだ後
「切符買ってくるわ。」
と、券売機へと向かった。
急に二人きりにされて動揺しているのはどうやら僕だけの様だった。
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