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「じゃあ、このマニキュアはどうして貴女のバッグに入っていたわけ?」
そう言って、猪俣は腕を組んで彼女を睨み付ける。
そのハスキーボイスには力が入っていた。
「だから、解らないんだってば。気が付いたら勝手に入ってたの」
「そんな曖昧な答えが通用すると思ったら大きな間違いよ。万引きは立派な犯罪なの。シラを切ったところで、絶対に許されることじゃないわ」
「だから……万引きじゃないって何度も言ってるでしょ? どうして解んないかな、このオバサン」
「貴女ねぇ……」
近付く猪俣を制止するように、僕は「まぁまぁ」と割って入った。
「事情は解りました。とりあえず、いつまでもここで討論していても終わりそうにありませんので、一旦うちの方で引き取ります。彼女にも言い分がありそうですし」
「そうしてください」
河野がうんざりした様子で首を立てに振った。
「じゃあ、良いかな?」と、僕は女子高生に問いかける。
口を尖らせながら頷く彼女を立たせ、石森交番へと促した。
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