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彼女の一言に、僕と成実は顔を見合せた。
普通は、警察沙汰になるのを嫌がるものだ。
「どうしてまた?」
僕が口を挟むと、由依は両手の指を組んでデスクの上にのせた。
「これで二回目なんです」
「何が?」
「……万引き扱いされるのが」
それは常習犯だからじゃないのか? とも思ったが、由依の顔を見る限りそういう意味ではなさそうだ。
「前にも、仲の良いクラスメイトが同じように捕まったの。でも、その子も実際にはやってなくて、気が付いたらバッグに化粧品が入ってたみたいなんです」
でも……と、由依は目を伏せる。
「そのことを誰も信じてくれなかった。先生を呼ばれて、学校でも咎められて……結局その子、それがきっかけで不登校になっちゃったの」
だからか……と、僕は頷いた。
最悪の前例を見ているから、由依は連絡を拒否していたのだろう。
「なんか悔しくって……それで、私も友人と三人でクスヤに行ったんです。一度お店の人と話がしたくて、それで店内を彷徨きながら店長さんを探してたの。そしたら……」
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