第一話 『万引きG犬』

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全体の色はベージュ。 表面には、チンチラのような柔らかい毛がはえている。 私は、小首を傾げながらも一歩近付いた。 フローリングの床でなんとか踏ん張りながらも、鼻先を伸ばして匂いを嗅ぐ。 微かに慎一の匂いがしますが、恐らくは新品でしょう。 使用された感じは全くしません。 となれば、これは慎一が新しく用意したモノで、まだ誰のものでもないということですよね? つまり、私にも権利があるということです。 私は迷わず前足で引き寄せると、先端部分に噛みついた。 そのまま首を横に動かし、右に左に振り回す。 いい感じに楽しくなってきたところで、背後から怒鳴り声が聞こえてきた。 「コラッ、ダイフクッ」 振り返ると、慎一が腰に手をあてて仁王立ちに構えている。 「ちょっと、新しいスリッパで何やってんのさっ」 .
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