第一話 『万引きG犬』

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       ◆ いつもと違う散歩道。 コンクリートの道は好きではないが、見慣れぬ景色を練り歩くのは嫌いじゃない。 住宅街を抜けて大通りを進むと、やがて『クスヤ』と書かれた大きな看板が見えてきた。 平日の午前中にも関わらず、駐車場は既に多くの車で埋まっている。 田舎の商売はなかなかに難しい。 大型ショッピングセンターにも負けず劣らずの繁盛ぶりは、きっと並々ならぬ努力があるのだろう。 駐車場の端を通り、正面入口へと近付いていく。 店先には、特売の野菜がズラリと並んでいた。 栗や柿など、秋ならではの食材も豊富だ。 中でも、カゴに積まれたサツマイモに目が止まる。 丸々と太ったサツマイモが、私を呼んでいた。 『甘くて美味しいよ』……と。 .
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