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リードを目一杯ひっぱり、鼻先を近付けるも残念ながら届かない。
あぁ……
なんでしょう。一口だけで良いのでかじってみたいです。
「コラッ、ダメだって。生で食べたらお腹壊すよ」
壊しても良いんです。
このサツマイモさんが、私を呼んでいるんですから。
「ダーメ」
舌で口元を舐めまわす私を、慎一はヒョイと持ち上げた。
「お金払わないなら、万引きと一緒になっちゃうからね」
……そうでした。
私としたことが、甘い誘惑に惑わされるところでした。
邪念を祓うように私は首を左右に振る。
すると、店内から一人の女性が近付いてきた。
「只野さん、昨日はどうも」と、慎一に頭を下げてくる。
ショートカットでボーイッシュな彼女は、どこかミーアキャットに似ています。
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