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「すみません、お仕事の邪魔をしちゃって」
「いえ」と、猪俣は買い物かごを手に取り、店内へと戻っていく。
すると、入れ違うように一人の男性が小走りで近付いてきた。
きっと彼が、店長の河野さんでしょう。
やや小太りに、薄くなった頭。
例えが悪くて申し訳ありませんが、あれに一番似ています。
……ウーパールーパー。
「河野さんすみません、お忙しいところ」
「いやいや、大丈夫です。ちょうど品出しが終わった所でしたので」と、河野は両手を擦り合わせていた。
乾燥してか、その手はあかぎれを起こしている。
慎一も気付いたのか、「それ……どうされたんですか?」と彼の手を指差した。
「これですか? 段ボールを扱ってると、どうしても手が荒れちゃうんですよ」
「そうなんですか。大変ですね」
「寒くなるとどうしてもね。でもまぁ、毎年の事ですし慣れたもんですよ」と、河野は両手に息をかけた。
本人は慣れているかも知れませんが、見ているコッチはどうしても痛々しく思えてしまいます。
もっとも、表に出るときは手袋をするのでしょうけど。
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