第一話 『万引きG犬』

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「事務所にワンちゃんを連れていくのは、ちょっと遠慮していただきたい」 両手を合わせる河野に、「わかってます」と、慎一は私を地面に降ろした。 なんだ、残念ですね…… 私も見たかったんですけどね、監視カメラの映像。 「とりあえず、そこを使ってください」と、河野は店の右手を指差した。 「一応、ペット用のスペースになってますから」 「あのポールですか?」と、慎一は私を誘導しながら店の外壁に向かって歩いていく。 自動販売機とベンチが置かれ、そのすぐ横に黄色いポールが建っている。 上からリードの輪をポールに通されると、私は見事に囚われの身となりました。 なんだか鎖に繋がれたようで、好きじゃないんですよね……コレ。 露骨に嫌な顔をして見せたが、慎一は全く見てくれない。 「じゃあ、お願いします」と、河野と二人で従業員入口へと歩いて行ってしまう。 仕方なく私は、ポールに繋がれたまま横のベンチに飛び乗った。 冷たいコンクリートの上でなんか、待ちたくはありません。 風邪を引いたら、どうしてくれるんでしょうか。 .
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