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「傘貸してくれたから、少し笹倉 叶ちゃんがどうい子か気になったから、昼飯でもいっしょしたいなって思って」
杉原先輩は「どいてどいて」とクラスメイト達を手で追い払い、私の席の前の椅子を向かい合わせる。
(結構強引なんですね)
「笹倉あんがとね、傘。あれ明日まで借りといていい?」
帰り濡れちゃうからさ、と机に肘をつく先輩。
「いいですよ、私にはいつも使っている傘がありますから」
私は笑顔でそう返事をする。
(……こんな人だったんだ)
特に不快感は感じませんでした。
逆に何も飾らない杉原先輩に私は好印象を持っていました。
悪い噂……それが気になりましたが、流石にここで今本人に聞くにはいきませんよね。
私は気にしないよう…いつものように、スクールバッグから家政婦が作ってくれたお弁当とタンブラーを取り出す。
「笹倉、これ傘のお礼だよ」
「え?」
先輩はビニール袋から瓶に入ったコーヒー牛乳を私の前に置きました。
(……コーヒーより紅茶の方が好きなんですが……)
顔に出ていたのか、先輩は困ったように笑った。
「あれ?……ひょっとして嫌いだったとか」
(またです、この表情……)
「……嫌いじゃないですよ?」
その表情のままの先輩に何故だか私まで困ってしまう。
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