晴れの日から雨の日へ。

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 今年は夏の陰りが早く、だいぶ涼しくなってきた9月下旬に入りました。 この学校にも文化祭があるようです。  私の通っていた公立中学も私立中学も文化祭はあったが、勉強の一貫としての文化祭で調べたものを発表するようなものでした。  しかし、高校の文化祭は違っていた。 『一年六組の催しものは、執事喫茶になりました!!』 (要するに家政夫みたいなものでしょう……) 「知ってるか?!三年二組の先輩達のクラスも執事喫茶だって!!」 「ヤバイな!!………そのクラスって杉原先輩がいるクラスじゃん」  ふと、隣の席から耳に自然と入ってきました。 (……?何故でしょう、同じ催しものではいけないのですか……)  その隣の席の生徒は頭を抱えていた。 「よりにもよって杉原先輩のクラスどダブるなんてサイアクじゃん!」  その前の席の生徒も聞こえていたらしく同調した。 「女の子持ってかれるな……」 「むさ苦しい私立の男子校で、唯一他校の女の子が来る文化祭なのに」  ………私は内心笑ってしまった。 (そうですか、だから執事喫茶なんですね)  女子はそういう支える、魅力的な紳士が好きだと、生前祖母が言っていたのを思い出しました。 『お祖父ちゃんも私の前ではとても尽くしてくれる紳士なのよ』  祖母のその時の笑顔を思い出して、私はクスッと笑ってしまったらしい。   「あ、叶さん……笑った!」 「男子校唯一の潤いに笑われた………」  ………私が笑ったらおかしいのでしょうか? 「いや、君達に笑ったわけではなくて…」  それでも、笑ったわけを教えるわけにもいかずにいると、 「でもウチのクラスには笹倉さんがいるし!」 「校内一の美少年がいればなっ!!」  ………よくわからないですが、どうやら私たちのクラスも変更せず執事喫茶をやるようです。  しかし、彼らが私に言った『潤い』とはなんでしょうか?  それに関しては今の私には何も知りもしませんでした。
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