1-1:物語の終わり

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「やめておけ……」 その空気の中、魔王の声が響く 「近々我が死ぬことは分かっていたことだ。まさか、こんな結末を迎えるとは予想だにしてなかったがな……。なに、寿命というものだ。」 セラスは弱々しく笑いながら、続ける 「我の時代は終わったのだ…。お前たちが次の時代を進めるのだ…。」 その言葉を受け、近衛騎士は声を挙げて王に宣言する 「私目が殿下を立派な王にして、長い魔族の繁栄をもたらせてみせます!」 大臣は涙ながらに王に囁く 「部下より早く亡くなられるなんて……。わたしがこの国をより良い方向に必ず……」 彼の息子である、王子ジャッジはセラスに約束する 「父上、僕が魔国を、世界を絶対に良い方向に…。」 セラスは忠臣たちと愛する息子の宣言を聞き、黙ってろと目を向けていた勇者に声をかける 「おい、なんて顔をしておる。お前は国の任務を全うできたのだぞ。」 勇者パーティは全員悲痛な顔をしていた。 先ほどまで楽しげにしていた、もはや友人とも呼べるセラスがこの状況なのである 「お前らは、この魔王である我を倒したのだぞ?誇りを持って、早急に国へ帰れ。魔国のことは、部下がなんとかしてくれる。」 「でも、このままじゃ魔国と人間の国が戦争に!」 ヒートアップさそうな会話を僧侶とジャッジが止める 「ジード、落ち着きなさい。私がこの顛末を王に話すわ。」 「エレナ(僧侶)さん、魔国側の暴動は僕がなんとかしてみせます。それより早くここからの離脱を!」 その間にも聖属性はセラスを蝕み、意識を飛ばそうとする しかしセラスは、それでも話す。未来を託すために 「勇者、お前はまだ未熟だ。お前にもいつか試練が来るだろう。守るべきものを作れ。信頼できる友や家族を作れ。それができぬと言うのならば……我がお前を殺しに行く。」 ニヤリと笑って無理やり約束を取り付けるセラス そして、彼は続ける 「さぁ、我を討て」 セラス以外の全員が涙を流す ジードは泣きながら先程拾い上げた聖剣を振り上げ、言う 「魔王の約束を守る勇者がどこにいる!蘇るなりなんなりして、俺を殺しに来い!セラス!」 その言葉を受け、少し驚いた顔をしつつも笑い 「少し待ってろ。お前を殺しに行くぞ、ジード…。」 彼が振るった剣は確かに、魔王の首を討ち取った
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