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歌っている間、加奈子を見ることはなかった。
歌だけで想いを伝えるんだ、離れてた間の全てを。
歌い終わると大きな拍手が歓迎してくれた。
照れながら、周りを見渡す、加奈子はノートを手に持ち何かを書いている。
最後まで聞いてくれたんだとホッとして、ギターを置く。
「おー!凄く集まったんだね。snsってやっぱり凄いなー」
先程の女子高生がまた来てくれていた。
「え?君が集めてくれたの?」
「ちょっとTwitterとフェイスブックでね、学校の子が来てくれたみたいだね」
それで、やたら学生服が多かったんだ。
「でも、それだけだよ他のお客さんはお兄さんの力!いい歌じゃなきゃ立ち止まってくれないじゃん」
「ありがとう」
普段よりお客さんがいて少しはカッコつけれたかなと感謝して、もう一度加奈子のほうを見る。
聞きに来てくれてありがとうと声をかけようと思ったんだ。
でも、ノートは違う人の手の中に。彼女は駅に歩き出している後ろ姿だった。
足取りは軽く、振り返る素振りも見せず。
そして彼女はだんだん小さくなり人混みに消えていった。
「何よ何よあの女の人じっと見つめちゃって」
女子高生の言葉で我に戻る。
ギターケースに戻ってきたノートに気づき、先程の加奈子が書いていた部分を探す。
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