ある日の路上

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いつもの路上より、客が明らかに多い特に学生が最初多く集まり、それが良い宣伝効果になったようだ。 ひとだかりを見渡す、やはり彼女はいない。 いや、別に悲しくはないんだがもしかしたらとついつい探してしまう。 最初は「歌上手いんだね」と彼女に誉められそれがただ嬉しかったという単純な理由で始めた音楽だった。 本気でとりこんでみると本当に楽しくていつもそばで 応援してくれる彼女がいて充実していた。 上を目指し、そのせいで大切な人を失い。 そして、今君に聞いてほしい曲ができた。 遠回りかだったのかな?でもそのおかげで得た景色。 いつか、あったら笑ってありがとうと言いたいな。 今日の最後の曲は「届けばいいな」を歌って切り上げよう。 「今日はたくさんのお客さんが来てくれまして、ありがとうございます。もう大分周りが暗くなってきたので最後に昨日できた新曲届けばいいなを歌います。 これは昔の恋人がどこかで幸せになって欲しいとただそれだけを願った曲です。」 最後の曲紹介を終えると軽く赤い顔をして息を整えようとしていた加奈子がいることに気づいた。 声をかけようかと思いギターを下げようとしたが、音楽だけで伝えようと思い直しギターをかけなおす。 大きく息を吸い込み、体中に空気を巡らす。 一つ一つの音、言葉を丁寧に心を込めて
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