06 三日目→四日目 / 手塚佳純side

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こんなにも次々と橋を渡って移動するのは、手塚には初めてのことだった。 初日に見た優美なラインを描く建造物に惹かれ、少しネットで調べて、世界でも珍しい吊り橋なのだと知った。それぞれの島を繋ぐ橋は地形に合わせて違うフォルムや構造を持つ。 島の間が近いと架橋が簡単になるような気がするが、麻生に説明された通り、島の間を貫く海峡の流れは狭いことでより速くなり難所と言われるほど工事は複雑になるらしい。 そんなことも感じさせない雄大で洗練された橋を見るのを少し楽しみにしていた。 こうして一日にたくさんの橋を渡ってあちこち行ってみると、どうしてこの映画は橋が架かる前の設定なのかと、どうにもならないことを思う。自分なら、閉ざされた島からバンバン行き来できるようになった後の人の気持ちが知りたいし、どこにでも行きたいところに行けばいいじゃないかと思う。 映画の印象は直接麻生につながっている。本当は出て行けるのに島の閉塞感にこだわり、しがみついているのは人の方だと感じてしまう。 手塚には理解できないことばかりだが、自分だって、アイドルやグループにしがみついているのかな…と考えずにいられない。 だからこそ麻生との間を無駄にかき回してしまうのかもしれない。人間関係に基本クールなはずの手塚がらしくもなく、面倒くさいことをわざわざ作って麻生に絡んでしまう。
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