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「よっしーねー、意外と根性あるし、可愛いとこあるよ」
「可愛げ?!全くないですね。ド下手くそでやる気ない上に態度もでかいし。会った途端、誰も自分の演技に期待なんてしてないって言い切るんですよ」
携帯の向こうから盛大な笑い声が聞こえる。
「お、初日からディープな会話して仲良くなってんじゃーん。それを何とかするのが、聖の仕事でしょ。よっしー、いじったら面白いよ」
「面白くないです!俺、無理ですよ。あいつを何とかする自信、一ミリもないです」
「またまたー。聖が一度仕事を受けたら、どうやったってとことんやり切るの知ってるし」
「それは自分の演技の話で、他人のことは無理です」
答える気もなく煙に巻くかのように、秀野は温度のない笑いを漏らす。
「よっしーね…」
冗談に塗れた空気の温度を声と共に下げる。囁くような僅かに甘い声。
「コレこけたらグループから切られるらしいんだよ。『祝・ご卒業』ってやつ?俺、責任重大じゃん?聖はさ、情が厚いから面倒見るの適任だと思うんだよね。俺にもよっしーにも恩が売れるよ。助けてよ」
よくもあんた、そんなこと言えるな。それに、あの男が首になろうが自分には関係ない!…と思いながら、乱暴な言葉を飲み込む。
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