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この道を選んだ理由は『下心』と言って間違いない。むしろそれだけだった。
二十歳の俺、ほんとバカだなーと、時折思い返す。正確には二十歳になる少し前、大学二年になったばかりの頃。
手塚は同性にしか興味がなかったがそのことで悩んだことはなく、持ち前の器用さとそこそこの見た目で相手に困ることもない。のめり込まない手軽な付き合いが手塚には合っていた。
ダンススクールで仲良くなった三つ年下の神崎は、スクールでもちょっと話題になるような垢抜けた雰囲気を持っていた。ふわっとした甘さがある顔立ちで『よしくん、よしくん』と懐かれて嫌な気はしない。
スキンシップ過剰にまとわりついてくるけれど、踏んだ場数の勘で絶対ストレートだと思っていた。ノンケを落としたこともなくはないから、淡い期待を抱きつつ手を出すには至らない。
「よしくん、今日この後空いてる?」
ダンスレッスンの後更衣室で神崎の方から声をかけてきたから、ちょっといい展開に持っていけないかなと瞬時に考える。まだ汗ばむ手塚の腹を神崎はぺたりと撫で、いい体だなー、毎日筋トレやってんの?と無邪気に煽ってくる。
「俺の体、細過ぎてやなんだよー。なんかね、なよっていうか、ひょろっていうか、薄くてやだ。最近背がまた伸びたから余計貧弱に見えるんだけど」
べらっと躊躇いなく今着替えたばかりのシャツを下から捲り、細い腰を晒す。
「歳もあると思うよ。多分そのうちバランスとれてくるよ。今も神崎はスタイルいいと思うけどな」
腰の位置が高いし、すんなり伸びやかなラインも綺麗だし。触りたいなー、いや本気で抱けたらいいんだけど…と、不埒なことを思いつつ、男にしてはキメの細かい肌から目が離せない。
そんなことも知らず神崎は「ほんとにー?俺、よしくんみたいになりたいなー」と可愛いことを言って笑った。
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