02 一日目 / 手塚佳純side

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 人気俳優、秀野悦士が初監督を務める映画の主演というのは、いきなりステップアップし過ぎで、手塚には手に余る仕事だ。なぜだろうという疑問の答えはすぐに噂として耳に入った。  元々神崎のところに来た話だったが、もし映画がコケたら映画初主演の神崎のダメージは大きい。秀野は多くの映画にも出ているけれど、ヒットしたテレビドラマから派生ものの方が多く、映画畑の人という印象が薄い。実績のない秀野の映画は前評判からして悪かった。その代わりネガティブな方向でメディアは盛り上がり、注目度は上がっている。  噂どころか、事務所のスタッフから面と向かって、手塚だったら映画の評価がどうなろうが矛先は向けられないから、とにかく目立たなければ大丈夫、と言われた。 『シャイニング・フューチャー』が近く解散するという話も頻繁に上がるし、その前にメンバー入れ替えしてテコ入れなどという噂もあり、手塚はじりじりと追い詰められていた。  映画撮影のために手塚のスケジュールはがっつり空けられている。地方ロケの一週間前に前のりという話が入った時も、どうぞどうぞという感じであっさりひとりで送り出されてしまった。     
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